外反母趾とは、足の親指(母趾)が小指側に曲がり、「く」の字のように変形し、母趾の付け根の腫れや痛みのために、靴を履いての歩行に支障をきたす状態をいいます。
足の母趾(親指)はまっすぐに伸びているのが本来の形ですが、外反母趾は親ゆびが人差しゆびの方に曲がっていたり、親ゆび付け根の骨が外に突き出た状態が外反母趾の症状です。外反母趾はその曲がっている角度により重症度が判断されます。突き出た骨が炎症を起こしている事があり、早急に治療が必要な場合があります。骨の変形以外に、親ゆびの関節(第1中足骨関節)部分が赤く腫れ、痛みを伴う人もいます。また、外反母趾の人の多くに親ゆび(第1趾)、第2趾の足の裏の部分に胼胝(たこ)が見られます。
外反母趾はヒールの高い靴や細長い靴を履くことで発症すると思われがちですが、裸足の民族や男性でも外反母趾の人がいるように、靴が原因ではなく、遺伝した足の構造により、関節の異常がある状態で歩行をすることで負荷がかかることで起こることがほとんどです。さらに、外反母趾は進行性の病気のために、時間の経過と共に悪化をするため、進行を止める治療が必要です。
足の前足部がうち倒れする場合も外に倒れる場合もどちらの場合の骨格異常がある場合にも外反母趾を発症する原因になります。
前足部(足の前の部分)の回内という足が内側に倒れこむ状態になる関節稼働をする足は、足の内側に負荷が加わるため、内側の足の甲の痛みや外反母趾の原因となります。靴の踵の内側と親指の付け根が同時に削れている方が該当している場合が多いです。
前足部が回外(外に倒れている状態)し、後足部は回内(うち倒れしている状態)の前足部と後足部はねじれの状態になっている足の構造を持つ方は、親指の付け根の骨が内側に曲がるため、非常に外反母趾のリスクが高い状態といえます。
また、前足部の回外による小指側への荷重の集中は、母趾側が浮く状態を作ります。これらを代償するために、親指の付け根の骨が内側に曲がります。その結果、外反母趾を引き起こすことがあります。
足の構造の歪みが主な原因ですが、足に合わない靴を履き続けることで外反母趾の進行を助長していることもあります。
日本のWEBサイトやテレビなどをみると、外反母趾の原因にハイヒールをあげるとするものや、外反母趾が悪化すると胼胝(たこ)が生じるような記載がありますがこれは間違いです。胼胝(たこ)ができるような関節異常が慢性化した結果、親指がまがるという病気を発症するので原因と結果が逆ですし、ハイヒールによって外反母趾になるということはバイオメカニクスとしては正しいとはいえません。ハイヒールが原因、女性に多いとありますが、相当数男性にも発症しております。重度になる方は女性が多いのはこれは外反母趾に関わらずすべての足病において同様の傾向を示すものであり、これは骨格を支える絶対筋量の少ない女性は関節異常を支える能力が男弾性よりも低いことから重症化しやすいからであり、ハイヒールを履いていない男性でも外反母趾の方は多く存在しています。ハイヒールが原因という説明は日本特有の説明であり、米国でそのように説明する人は少数です。原因の一つにハイヒールに限らず、幼少期などの発育期に足の形に合わない靴、バレエシューズなどもその最たるものですが、靴に足をあわせると骨が間違った形状で発育して外反母趾になるという事があります。そのため靴の原因で外反母趾になるということを否定するものではありませんが、これは日本の上履きでも発生する問題であり、ハイヒールだけを目の敵にする必要はなく、適切な靴を骨格補正をすれば外反母趾は予防できるという説明が正確であると当院では考えています。
外反母趾は足部のレントゲン写真で診断します。第1中足骨と第1基節骨のなす角を外反母趾角と言い、20度までを正常、20~30度までを軽症、30~40度までを中等症、それ以上を重症といいます。重症の場合には手術での治療が勧められます。第2趾が亜脱臼/脱臼する前に手術をしたほうが、治療成績がよいとされています。
外反母趾は進行すると隣のゆびに親指がのってしまうほどに変形し、関節は脱臼してしまいます。変形がすすむことで履ける靴がほとんどなくなり、無理をして靴を履くことで靴擦れをおこし、歩行ができなくなります。
外反母趾を起こす関節や骨格の異常は外反母趾だけの問題にとどまらず、関節炎や他関節の変形性関節症の発症に関連する場合も多くあります。
また、また、外反母趾の人の多くに親ゆび(第1趾)、第2趾の足の裏の部分に胼胝(たこ)が見られ胼胝(タコ)や魚の目(ウオノメ)の治療も並行して必要になります。
外反母趾は原因となる骨格の異常を是正しない限りは進行し続ける疾患ですので、指が曲がっているとおもったら軽度の状況で痛みが少ない場合でも一度受診することを勧めます。
装具療法:医療用のインソールは過回内の動きを防ぎ、痛みの軽減に役立ち、外反母趾の悪化を防ぐことができます。また回外が原因の場合は回外を補正することで小趾側への荷重の集中を防ぎ外反母趾の悪化を防ぐことができます。
テーピング:医療用インソールを用いた装具療法と同様の理由でテーピングによる足の姿勢(アライメント)の矯正を行い外反母趾の悪化を防ぐことができます。しかしテーピングは貼りなおす必要があるため、長期的な治療を行う場合には装具療法が優れています。
注射療法:ステロイド注射で、関節の炎症や痛みの緩和に役立つことがあります。ただし、効果は一時的であり、繰り返し行うと関節への悪影響があるため、医師の判断に従って行ってください。
靴の補正:外反母趾パットなど親ゆびの付け根部分の出っ張った骨が靴にあたって痛む場合は、外反母趾パッドなどで靴の摩擦・圧の低減をします
外反母趾がひどく靴が履けない、履きたい靴が履けない、見た目から治したいなどの状態にある方は手術による治療を検討します。骨切り術、関節固定術などがあり、100種類以上の手術方法があると言われており、足の状態によって手術方法を医師が選択します。
米国では外反母趾はすべて日帰り手術で行われます。
当院でも履きたい靴が履けない、見た目も治したいなどの場合には、手術をお勧めしております。手術を希望する方は医師、看護師までお伝えください。当院では日帰り手術を行います。
※手術は提携医療機関の手術室にて行います。
外反母趾に対するリハビリテーションでは、残念ながら現在、存在する外反母趾を改善して指をまっすぐにもどすことはできません。これらは、手術の役割となります。では、リハビリテーションでは一体何を目的とするかというと、今後の外反母趾の進行の予防と外反母趾が発生する原因となっている足部によって引き起こされる関節への負荷や歩き方の異常を改善することです。
外反母趾は、後足部の回内・回外、前足部の回内・回外いずれの状況でも発生する可能性があり、その病態によって必要なトレーニングは異なります。しかし、大切なことは、親指の骨がまがることは結果であって、原因ではないことで、その多くが、親指そのものよりも指の手前の足部のアライメント異常が引き金となっています。これらのアライメント異常をひきおこす筋力低下や関節の制限を取り除くことが大切です。原因となる足部のタイプは複数あるため、受診してご自身の外反母趾の要因を知ることがまずは大切です。
外反母趾の予防は足のタイプによって異なるため、足のタイプの診断については当院の受診をお勧めします。
日常でできる後足部の回内または回外をとめるために必要なトレーニング
・後脛骨筋の筋力トレーニング
・長腓骨筋の筋力トレーング
・母指外転筋の筋力トレーニング
・距骨下関節のストレッチ
・アキレス腱のストレッチ