びまん性骨増殖症(Diffuse idiopathic skeletal hyperostosis, DISH)は、脊椎や関節周辺に見られる骨の異常増殖症で、全身に少しずつ過剰骨ができていく病気です。
中高年に多く見られます。かつてはForestier病とも呼ばれてた難病です。
びまん性骨増殖症の症状は、脊椎や肩甲骨周辺の痛み、こわばり、運動制限などです。一般的には痛みは軽度で、しばしば無症状であることもあります。ただし、進行すると痛みが強くなり、手足のしびれや痺れ、脊柱管狭窄症のような神経症状を引き起こすことがあります。また、食道や気管の圧迫によって嚥下障害や呼吸困難が生じる場合もあります。
びまん性骨増殖症(DISH)の原因は完全には明らかにされていませんが、加齢や肥満、糖尿病、高脂血症などがリスク要因として挙げられています。遺伝的な要因も関与していると考えられています。また、関節の慢性的な炎症や外傷、手術後の経過なども関連していることが報告されています。
びまん性骨増殖症(DISH)の検査は、主に画像検査が行われます。X線検査やCT検査、MRI検査などが使用されます。X線検査では、脊椎の側面から撮影することで、棘突起周囲の骨質増殖が確認されます。CT検査やMRI検査では、より詳細な情報が得られます。また、血液検査なども行われる場合がありますが、特異的な検査法は存在しません。
びまん性骨増殖症(DISH)が進行すると、次のようなリスクがあります。
DISHは、脊椎の周囲に骨が形成されるため、神経障害や神経の圧迫症状を引き起こす可能性があります。神経圧迫症状には、痛みやしびれ、筋力低下、歩行障害などがあります。
DISHが進行すると、脊椎の周囲に形成された骨が脊柱管を狭め、脊柱管狭窄症を引き起こす可能性があります。脊柱管狭窄症により、神経症状が悪化することがあります。
DISHでは、骨が硬くなりますが、骨が硬くなりすぎると、関節の可動域なども制限され骨折しやすくなる可能性があります。特に、脊椎の骨折は脊髄損傷など重大な合併症を引き起こすことがあります。
DISHは、高血圧、糖尿病、心臓病など、他の疾患との関連性があることが知られています。したがって、DISH患者は、これらの疾患の予防や治療も必要です。
びまん性骨増殖症(DISH)の治療方法は、主に症状の緩和や合併症の予防が目的となります。痛みや炎症がある場合には、炎症を抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド剤が処方されることがあります。また、運動療法や物理療法も有効な治療法とされており、特に脊柱の可動域を改善するエクササイズが推奨されています。さらに、体重の増加を抑えることや、運動による負荷を軽減するために、適切な体重管理や運動量の調整も必要です。
運動療法:びまん性骨増殖症(DISH)は少しずつ関節可動域が制限されていく事がおおいため、関節可動域を維持するための適切なトレーニングやストレッチを医師と専門職に相談しておこなう事が重要です
再生医療:培養上清エクソソーム療法による炎症の緩和と組織修復の改善ができる場合があります。(自費診療のみとなり、標準治療で改善されないケースでのみ適応)
手術が必要になることは稀であり、重度の合併症がある場合に限られます。
びまん性骨増殖症に対するリハビリテーションは主に、脊柱の関節可動域を維持したり、急激に固くならないようにするストレッチや運動を行います。また、状況に合わせて、周辺の関節の可動域を改善、拡大していき、動作を行う際に固くなった関節の機能を補えるようにしていくことも行います。
症状に合わせて、可能な運動や、適度な運動量などの提案を行い、急激な運動機能の低下を防ぎ、機能を維持することも行います。
びまん性骨増殖症(DISH)の具体的な予防方法は確立されていません。しかしながら、以下のような健康習慣や注意点が推奨されています。
びまん性骨増殖症(DISH)の発症リスクを下げるためには、適度な運動を行い、適正な体重を維持することが重要です。運動には、ウォーキング、ジョギング、水泳などが含まれます。
喫煙は骨粗しょう症を引き起こすことがあり、また、びまん性骨増殖症(DISH)を進行させる可能性があるため、喫煙は控えることが望ましいです。
健康な食生活は、骨の健康に重要です。カルシウムやビタミンDを豊富に含む食品を積極的に摂取するように心がけましょう。また、肉や魚などのタンパク質や野菜、果物などバランスのとれた食事を心がけましょう。
転倒やけがを予防するために、適度な運動を行い、バランス感覚を養うことが重要です。また、スリッパや靴底などの滑りにくいものを履く、室内や外出先の段差や障害物に注意するなど、周囲に注意を払い、転倒を防ぐようにしましょう。