足の骨格形成は年齢別に以下のように成長します。
外反母趾は女性がヒールをはいているからおきると思い込んでいると、子供に外反母趾はいないと思いがちですが、大阪大学の研究によると、小学生の40%、中学生においては60%に外反母趾がみられたというデータもあります。実際に研究されている方が足病医ではないので、軽度の外反母趾を含めるなどデータとしては過剰な集計があったかもしれませんが、実際に子供の外反母趾は想像以上に多く発生する病気です。米国の足病医は子供の外反母趾を重症化しないために子供にインソールを履かせる事を強く推奨しています。外反母趾になる理由はこれまでにも説明しているとおり関節異常が原因ですので、親が外反母趾の場合、高確率で外反母趾になる可能性があります。また親の世代よりも足に加わる負荷(床反力)が増大しやすい環境で生活しているので、リスクは親よりも高いといえます。外反母趾の矯正はニュートラルポジションで骨格形成を行うという事が必要です。骨のアライメント(姿勢)が正常になるように医療用装具で補正することでほとんどの場合、骨格形成を正常にコントロールすることができます。
胎児は5億年に及ぶ生物の進化を再現して生まれてくるといわれています。原始魚類から両生類、爬虫類、哺乳類の順です。陸に上がったのは3億年前のこと。生まれたばかりの赤ちゃんは半年も経つと、両生類のようなずり這いをはじめます。爬虫類のハイハイがそのあと行われ、哺乳類のような歩行になり、最後には2足歩行を獲得します。陸に上がって以来3億年の進化を1年で再現しているのは興味深い事実です。足の成長は説明したように、12歳まででほぼその方向性がきまり、14歳ころから変形の根治が難しい状態、つまり軟骨が骨にかわる骨化が徐々に完了していきます。
成長が早い子供や遅い子供もいるのでそれより早くに形成が終わる子供もいます。2歳までに足に過剰な圧力をかけてしまえば将来にわたって苦しむ可能性があり、2歳から6歳までの靴がサイズにあっていない、子供が正しく靴を履けなければ、骨形成上で大きな不利益を与えます。6歳以降の子供は徐々に自分の履きたい靴を主張しますが、6歳までの靴を選ぶのは親になります。
靴の履き方を正しく教えて、靴のサイズと足のサイズをきちんとあわせることは親にしかできない重要な子育てになります。歯磨きをおしえるように靴の選び方、履き方を教えてあげてください。日本人は靴の脱ぎ方はとても厳しく教えます。靴をそろえる事でそんなに注意をするのですから、履き方、サイズのあってない靴を履いたらもっと怒って欲しいとおもいます。子供が硬い地面で走るときに靴をはいていなければ怖いと思ってください。裸足で育成するとよいというのはある意味では正解な部分もあります。足の裏の感覚をそだてるうえで裸足というのは脳の発育によいとされています。しかし、硬い地面でそれを行う場合には骨格変形を助長してしまうのです。柔らかい場所を裸足で走らせてください。決して硬い場所を走らせる事は子供のためにはなりません。
乳幼児のO脚は通常、成長とともに自然に改善されることが多い正常な現象です。特に、2歳までの子どもはO脚が見られることが一般的です。ただし、O脚が非常に強く、長期間続く場合は、特定の病気や異常が原因である可能性があります。4歳くらいまでが一つの目安なりますが、たとえば、特発性O脚、筋萎縮性側索硬化症、脊柱側彎症、ブラウント病、くる病、低カルシウム血症、ビタミンD欠乏症(ビタミンDは、骨の形成や強度を維持するのに重要な栄養素であり、欠乏症は骨の発育に悪影響を与えることが知られています。欠乏症によって、カルシウムの吸収が不十分になり、骨の発育が妨げられます)、ラケット足(足の親指の付け根の外側に、骨の突起がある状態を指します。この骨の突起を「外果」といい、通常、この外果は小さくなっているのが正常ですが、ラケット足では突起が大きく、形がラケットのようになっているため、このような名称がついています。ラケット足は、先天性の骨異常の1つで、遺伝的な要因によって引き起こされる場合があります。また、習慣性によって発生する場合もあり、赤ちゃんの足に圧迫がかかるような靴や靴下を長時間着用することで、ラケット足が発生することが知られています。)などの足病の可能性が考えられます。そのため、O脚が非常に強く、長期間続く場合には、受診が必要になります。乳幼児の際には足に圧迫をかけない事が非常に重要です。靴を履くようになってもサイズの狭い靴を履かせたりしてはならず、とはいえぶかぶかでもないサイズのあった靴をこまめに買い換えて履かせる事で将来の骨格を守ることができます。
子供は育成において遺伝的な原因がある場合は特に外反母趾になりやすいのですが、加えて次のような病気を発症しやすいといわれています。
こどもの足に合ったサイズと形状の靴を選びましょう。靴は足に十分なスペースを与え、足の成長を妨げないようにすることが重要です。また、定期的に足のサイズを測定し、必要に応じて靴を買い替えることが大切です。
足のサイズは月に1回かならず縦と横のサイズを計測してあげてください。子供はいきなり成長します。足を注意深く観察することがなによりも一番重要です。
当院に受診されたかたには靴の正しい履き方の指導を行っています。靴はかかとにあわせてはき、しっかりと靴紐を結ぶことが重要です。靴紐はうち倒れしている足をもちあげるように内側の紐を強く引くのがよいです。子供の足元の習慣は幼児期にきまります。不適切な靴の履き方のまま育ててしまうと、その履き方が心地よくなるともいわれています。
そのため、靴のそろえ方と同じか、それ以上に靴の正しい履き方を教えてあげることが大事です。
定期的に子供の足をチェックし、異常がないか確認しましょう。特に、かかとや足の裏、足指の状態をよく観察し、胼胝(たこ)ができていたり、なにか異常があれば早期に受診してください。
足の清潔さを保ち、水虫などの感染症を予防するために、適切なフットケアを行いましょう。子供には、足を洗う習慣や靴下を毎日取り替えることを教えて、足の衛生習慣を身につけさせましょう。
水虫の感染源が子供であることはとても多いです。プールの時期など感染しやすい状態になっています。手の消毒のように、真菌に効く足の除菌もできる場合にはするとよいです。
こどもにとって靴の習慣づくりと適切な靴をはいて歩き、運動することは子供の成長においてなによりも重要な事です。体育館での授業や遊びの際にペラペラの上履きを履かせることは、子どもの足の健康にとっては最悪な状況といえます。。最近になって日本フットケア・足病医学会も子供の足のガイドラインを出していますので参考になると思います。
子供が運動をするのであれば、ジャンプしたり飛び跳ねたりするのですから、バスケットシューズのような衝撃吸収に優れたシューズを履かせるべきです。歩行やランニングであればかかとを固定する機能を持ったスニーカーが必要だと考えます。一部のドイツ系の靴会社がすすめるような重い靴を子供に履かせることや、革の靴をはかせることについては必要ではありません。
子供が周りとちがった靴をはいていたらからかわれたり、いじめられるのは当たり前に起きることですし、かっこいい靴やかわいい靴を選んで新しい靴を履いた時の喜びは子供にとってもとても大事な経験です。重いオーダーメイドの靴をはいて、思いっきり運動はできません。
よほどの障害がない限り米国でも現在のドイツでも小児の靴でオーダーメイドの靴は提供しませんし、保険(民間保険)でもカバーされません。ドイツ靴のようなオーダーメイドの重い靴がはけるのは、成人でしかも筋肉量があり、足の骨格が破綻したような方のために作られるものであり、誰にでも適用することは別の問題を生むと考えます。子どもの足の矯正は、足の骨格形成そのものに影響をし、骨格がきちんと育つことが100歳まで歩ける一番の方法です。将来の寝たきり予防にも絶対につながる重要な取り組みですので、子育てをしている方は子供の足を大切に見守って適切な靴を選んであげて欲しいと思います。
ご両親が子供の歩き方や足の大きさの定期的な計測をして見守ってあげることが子供の将来の足病を予防し、100歳まで歩ける足の骨格をプレゼントしてあげることになります。