こどもの成長と足

こどもの成長

足の骨格形成は年齢別に以下のように成長します。

  1. 乳幼児期(0~2歳)
    この期間は、足の骨格形成にとって非常に重要な時期であり、特に1歳から2歳にかけて急速に成長します。この期間は、O脚が生じることが一般的であり、成長に伴い自然に改善されることが多いです。この時の足の骨はほぼ軟骨でできており、とても柔らかく、変形しやすい状態です。
  2. 幼児期(2~6歳)
    この期間には、足の骨の成長が続き、O脚は自然に改善されます。また、アーチの形成が始まり、足裏にくぼみが現れます。この時期においても骨は大人のような骨化はしておらず軟骨がほとんどになります。少しずつ骨にかわっていくため、この時期の靴の選択が将来の骨のゆがみや関節異常の原因になることが多くあります。
  3. 子供期・学童期(6~12歳)
    この期間には、足の骨格形成が安定し、アーチの発達が進みます。外反母趾などの足の形成異常が生じることがありますが、運動療法や適切な靴の選択などで予防・治療することができます。この時期までが足の矯正による根本的な治療が可能な時期になります。ここから先は軟骨がきちんとした骨にかわっていき、少しずつ矯正が難しくなります。
  4. 思春期(12~18歳)
    この期間には、骨の成長が続き、学校などの部活動などの影響から成長痛やスポーツ障害が生じることがあります。また、成長の過程で外反母趾や扁平足、アキレス腱の短縮などが生じることもあります。骨形成が完了しないまでは矯正効果があり、逆にこの時期に大きなけがや変形をおこしてしまうとそのまま固まってしまい大人になってもその状態で足病を治療していく事になります。
  5. 成人期(18歳以降)
    この期間には、足の骨の成長は止まり、骨の密度が徐々に減少します。また、長年の歩行や靴の選択などの影響で、足の形状に変化が生じはじめます。足の老化がはじまるということで、この時期以降の足病の骨格矯正は手術以外は眼鏡と同様でインソールなどを履いている間だけ矯正ができる姿勢矯正を行う事になります。

子どもの外反母趾に要注意

外反母趾は女性がヒールをはいているからおきると思い込んでいると、子供に外反母趾はいないと思いがちですが、大阪大学の研究によると、小学生の40%、中学生においては60%に外反母趾がみられたというデータもあります。実際に研究されている方が足病医ではないので、軽度の外反母趾を含めるなどデータとしては過剰な集計があったかもしれませんが、実際に子供の外反母趾は想像以上に多く発生する病気です。米国の足病医は子供の外反母趾を重症化しないために子供にインソールを履かせる事を強く推奨しています。外反母趾になる理由はこれまでにも説明しているとおり関節異常が原因ですので、親が外反母趾の場合、高確率で外反母趾になる可能性があります。また親の世代よりも足に加わる負荷(床反力)が増大しやすい環境で生活しているので、リスクは親よりも高いといえます。外反母趾の矯正はニュートラルポジションで骨格形成を行うという事が必要です。骨のアライメント(姿勢)が正常になるように医療用装具で補正することでほとんどの場合、骨格形成を正常にコントロールすることができます。

子どもの足の健康はご両親が守る

胎児は5億年に及ぶ生物の進化を再現して生まれてくるといわれています。原始魚類から両生類、爬虫類、哺乳類の順です。陸に上がったのは3億年前のこと。生まれたばかりの赤ちゃんは半年も経つと、両生類のようなずり這いをはじめます。爬虫類のハイハイがそのあと行われ、哺乳類のような歩行になり、最後には2足歩行を獲得します。陸に上がって以来3億年の進化を1年で再現しているのは興味深い事実です。足の成長は説明したように、12歳まででほぼその方向性がきまり、14歳ころから変形の根治が難しい状態、つまり軟骨が骨にかわる骨化が徐々に完了していきます。

成長が早い子供や遅い子供もいるのでそれより早くに形成が終わる子供もいます。2歳までに足に過剰な圧力をかけてしまえば将来にわたって苦しむ可能性があり、2歳から6歳までの靴がサイズにあっていない、子供が正しく靴を履けなければ、骨形成上で大きな不利益を与えます。6歳以降の子供は徐々に自分の履きたい靴を主張しますが、6歳までの靴を選ぶのは親になります。

靴の履き方を正しく教えて、靴のサイズと足のサイズをきちんとあわせることは親にしかできない重要な子育てになります。歯磨きをおしえるように靴の選び方、履き方を教えてあげてください。日本人は靴の脱ぎ方はとても厳しく教えます。靴をそろえる事でそんなに注意をするのですから、履き方、サイズのあってない靴を履いたらもっと怒って欲しいとおもいます。子供が硬い地面で走るときに靴をはいていなければ怖いと思ってください。裸足で育成するとよいというのはある意味では正解な部分もあります。足の裏の感覚をそだてるうえで裸足というのは脳の発育によいとされています。しかし、硬い地面でそれを行う場合には骨格変形を助長してしまうのです。柔らかい場所を裸足で走らせてください。決して硬い場所を走らせる事は子供のためにはなりません。

こどもの足に関わる病気・症状

乳幼児のO脚は心配いりません

乳幼児のO脚は通常、成長とともに自然に改善されることが多い正常な現象です。特に、2歳までの子どもはO脚が見られることが一般的です。ただし、O脚が非常に強く、長期間続く場合は、特定の病気や異常が原因である可能性があります。4歳くらいまでが一つの目安なりますが、たとえば、特発性O脚、筋萎縮性側索硬化症、脊柱側彎症、ブラウント病、くる病、低カルシウム血症、ビタミンD欠乏症(ビタミンDは、骨の形成や強度を維持するのに重要な栄養素であり、欠乏症は骨の発育に悪影響を与えることが知られています。欠乏症によって、カルシウムの吸収が不十分になり、骨の発育が妨げられます)、ラケット足(足の親指の付け根の外側に、骨の突起がある状態を指します。この骨の突起を「外果」といい、通常、この外果は小さくなっているのが正常ですが、ラケット足では突起が大きく、形がラケットのようになっているため、このような名称がついています。ラケット足は、先天性の骨異常の1つで、遺伝的な要因によって引き起こされる場合があります。また、習慣性によって発生する場合もあり、赤ちゃんの足に圧迫がかかるような靴や靴下を長時間着用することで、ラケット足が発生することが知られています。)などの足病の可能性が考えられます。そのため、O脚が非常に強く、長期間続く場合には、受診が必要になります。乳幼児の際には足に圧迫をかけない事が非常に重要です。靴を履くようになってもサイズの狭い靴を履かせたりしてはならず、とはいえぶかぶかでもないサイズのあった靴をこまめに買い換えて履かせる事で将来の骨格を守ることができます。

幼児期に起きやすい足の病気

子供は育成において遺伝的な原因がある場合は特に外反母趾になりやすいのですが、加えて次のような病気を発症しやすいといわれています。

  1. O脚
    O脚は、足の骨格がO字型に開いてしまう状態を指します。通常、2歳までの幼児にO脚が見られることがありますが、その後、自然に改善される場合が多いです。しかし、O脚が長期にわたって続く場合は、病気が原因である可能性があるため、小児科医、足病医に相談することが重要です。
  2. 扁平足
    扁平足は、足のアーチ(足裏のくぼみ)がなくなり、足の裏全体が地面についてしまう状態を指します。多くの場合、成長とともに改善されることが多いですが、運動不足や肥満、遺伝などが原因で重度の場合は治療、矯正を行う事を勧めます。 
  3. 外反足
    外反足は、足首が内側に倒れてしまい、足の外側が浮いてしまう状態を指します。外反足は、歩行や走行時に不安定になるため、倒れやすく、転倒しやすくなることがあります。治療としては、装具療法に加えて、運動療法、足首のサポートが必要になります。

思春期に起きやすい足の病気

  1. 足底腱膜炎
    足底にある腱膜が炎症を起こす疾患で、ランニングやバスケットボールなどのスポーツをしている人に多く発症します。足底に痛みが生じるため、歩行や走行が困難になることがあります。
  2. 骨端症
    成長部分に痛みが生じる骨疾患で、走行やジャンプなどのスポーツをしている人に多くみられます。特に、走行後に痛みが悪化することがあります。
    「骨端症」はこどもの足に特有の骨の病気です。骨端とは骨の端の軟骨で、成長すると骨になる部分です。多くの場合、こどもは痛みを訴えるだけで、患部をみても腫脹(はれ)や局所発赤(赤くなること)などの症状が見られない事が多くあります。親御さんの中にはこどもがぐずっているように感じたり、成長痛だろうとそのままにしてしまう場合もありますが、こどもの足はつかれやすく、また、変形しやすいものです。正しく治療を行わないず、そのままにしてしまう事で、問題があるまま固まって骨になってしまい、大人になっても痛みがなくならない事も多くあります。
  3. 足の捻挫
    足の捻挫は、足首の内側または外側の靭帯が過度に伸展することで損傷を受ける状態を指します。靭帯は、骨と骨をつなぐ組織で、関節の安定性を保ち、動きをコントロールしています。足首は、多くの動きを行うため、捻挫が起こりやすい部位です。足首の捻挫は、多くの場合、踏み外したり、転倒したり、過剰な負荷がかかったりすることによって発生しますが、ハイアーチの足のタイプでよく発生するといわれています。子供のときの足の捻挫を正しく治療をしないと靭帯がのびたまま成長してしまい、将来の関節異常の原因や足根洞症候群につながります。捻挫をした場合は病院に行き、テーピングなどで必要な処置を受けるようにしてください。
  4. シーバー病(セバー病)
    かかとの骨に痛みが生じる骨疾患で、主に小学生や中学生にみられます。長時間の運動や負荷がかかるスポーツをしている人に多くみられ、かかとの痛みが生じたり、歩行が困難になることがあります。
  5. ケーラー病
    足の第2中足骨の骨組織に壊死が起こる骨疾患の一種です。通常、青年期や思春期に発症することが多く、男児に多くみられる足病です。ケーラー病の原因はまだ完全には解明されていませんが、足の中足骨に栄養不良が生じることが原因で、結果的に骨組織が死滅すると考えられています。栄養不良が生じる理由は、血流障害や骨の成長の遅れなどが関係している可能性があるといわれています。ケーラー病の主な症状は、足の痛みや腫れです。痛みは、足底や足の指に現れることが多く、特に長時間の立ち仕事や運動後に症状が悪化することがあります。また、歩行時に不安定感を感じたり、足底にコブができることもあります。
  6. 疲労骨折
    こどもの骨は柔らかく、慢性的な負荷がかかっていると疲労骨折を起こすことがあります。大人のように骨が硬いないので、レントゲンでぽっきりと折れることはなく、MRIを撮影すると骨が炎症をおこして疲労骨折の状態になっていることがあります。運動中よりも帰り道のほうが痛いなどの特徴があります。
  7. スポーツ障害
    思春期においてはスポーツと関連したスポーツ障害の足病が増えます。スポーツ障害によってさらに足の骨格が変形する事もおおいため、スポーツをするときにはスポーツ専用の靴を履き、スポーツが終われば、スニーカーにインソールをいれるように足をケアして骨格矯正を行う事をお勧めします。

こどもの足病予防法

適切な靴選び

こどもの足に合ったサイズと形状の靴を選びましょう。靴は足に十分なスペースを与え、足の成長を妨げないようにすることが重要です。また、定期的に足のサイズを測定し、必要に応じて靴を買い替えることが大切です。

足のサイズは月に1回かならず縦と横のサイズを計測してあげてください。子供はいきなり成長します。足を注意深く観察することがなによりも一番重要です。

靴の履き方の教育

当院に受診されたかたには靴の正しい履き方の指導を行っています。靴はかかとにあわせてはき、しっかりと靴紐を結ぶことが重要です。靴紐はうち倒れしている足をもちあげるように内側の紐を強く引くのがよいです。子供の足元の習慣は幼児期にきまります。不適切な靴の履き方のまま育ててしまうと、その履き方が心地よくなるともいわれています。

そのため、靴のそろえ方と同じか、それ以上に靴の正しい履き方を教えてあげることが大事です。

足の健康チェック

定期的に子供の足をチェックし、異常がないか確認しましょう。特に、かかとや足の裏、足指の状態をよく観察し、胼胝(たこ)ができていたり、なにか異常があれば早期に受診してください。

足の衛生維持

足の清潔さを保ち、水虫などの感染症を予防するために、適切なフットケアを行いましょう。子供には、足を洗う習慣や靴下を毎日取り替えることを教えて、足の衛生習慣を身につけさせましょう。

水虫の感染源が子供であることはとても多いです。プールの時期など感染しやすい状態になっています。手の消毒のように、真菌に効く足の除菌もできる場合にはするとよいです。

こどもの将来の足病予防のために

こどもにとって靴の習慣づくりと適切な靴をはいて歩き、運動することは子供の成長においてなによりも重要な事です。体育館での授業や遊びの際にペラペラの上履きを履かせることは、子どもの足の健康にとっては最悪な状況といえます。。最近になって日本フットケア・足病医学会も子供の足のガイドラインを出していますので参考になると思います。
子供が運動をするのであれば、ジャンプしたり飛び跳ねたりするのですから、バスケットシューズのような衝撃吸収に優れたシューズを履かせるべきです。歩行やランニングであればかかとを固定する機能を持ったスニーカーが必要だと考えます。一部のドイツ系の靴会社がすすめるような重い靴を子供に履かせることや、革の靴をはかせることについては必要ではありません。
子供が周りとちがった靴をはいていたらからかわれたり、いじめられるのは当たり前に起きることですし、かっこいい靴やかわいい靴を選んで新しい靴を履いた時の喜びは子供にとってもとても大事な経験です。重いオーダーメイドの靴をはいて、思いっきり運動はできません。
よほどの障害がない限り米国でも現在のドイツでも小児の靴でオーダーメイドの靴は提供しませんし、保険(民間保険)でもカバーされません。ドイツ靴のようなオーダーメイドの重い靴がはけるのは、成人でしかも筋肉量があり、足の骨格が破綻したような方のために作られるものであり、誰にでも適用することは別の問題を生むと考えます。子どもの足の矯正は、足の骨格形成そのものに影響をし、骨格がきちんと育つことが100歳まで歩ける一番の方法です。将来の寝たきり予防にも絶対につながる重要な取り組みですので、子育てをしている方は子供の足を大切に見守って適切な靴を選んであげて欲しいと思います。

ご両親が子供の歩き方や足の大きさの定期的な計測をして見守ってあげることが子供の将来の足病を予防し、100歳まで歩ける足の骨格をプレゼントしてあげることになります。

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