足の構造

歩き方と足の骨・関節・靭帯の関係

人の足と足首には、片側だけで28個の骨が存在しています。両側で56個となり、全身の骨の約1/4を占めています。そして、55の関節が存在し、これらの関節が、歩いているときに調和のとれたさまざまな運動を行い、私たちは安全に、快適に歩くことができます。

歩く際の足の役割は大きく分けて3つあります。1つは、歩いているときの衝撃を吸収するものです。2つ目は、筋肉などで生まれた力を床に伝えて前に進む力(推進力)を生み出すことです。3つ目は、さまざまな地面の形状に足を適合されることです。これら3つの役割を果たすために、足の多くの骨や関節、靭帯、筋肉が協調して作用することで、適切に機能しています。

足の機能は、多くの骨、関節、靭帯、筋肉の繊細なバランスで保たれています。そのため、ちょっとしたことで、そのバランスが崩れます。一旦崩れると、足の違和感や、歩き方の変化が起こります。そして、徐々にそれがひどくなると、足の痛みや、疲れやすさなど具体的な症状が生まれます。この状態に至る前に予防することが足病では重要となります。当院では、足の機能のアンバランスを見つける歩行(歩容)解析を提供しています。

足の骨

人間の足には28個の骨があります。代表的な骨とそれぞれの機能です。

脛骨・腓骨

脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)は下腿(ふくらはぎ)にある2つの骨です。脛骨は、2本のうち内側にある太い長い骨で、いわゆるスネの骨です。脛骨は足関節を構成する骨で、末端部の内側に大きな膨らみが存在します。これが、いわゆる内くるぶし(内果)です。腓骨は脛骨よりも外側にあり、細い形状の骨です。脛骨と同様に足関節を構成しており、末端部の外側に膨らみが存在します。これが、いわゆる外くるぶし(外果)です。

この2つの骨が距骨を挟むことで足首の関節である足関節が構成されています。

距骨

距骨(きょこつ)は脛骨と腓骨とともに足関節を構成する重要な骨です。距骨は、足部と下腿を結ぶ重要な役割を果たして、足首の運動において重要です。それに加えて、かかとの骨である踵骨と連動して、足の立体的で複雑な動きを作り出しています。さらに、足の特徴的な構造である、アーチ構造において要石となり、重要な役割を果たしています。

踵骨

踵骨(しょうこつ)はいわゆる「かかと」の骨です。足の骨としては、もっとも大きな骨です。かかとの丸い形状は、この骨の形状に由来します。この骨には、アキレス腱が付着しており、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)の力を受けて、足の骨に伝える役割を担っています。加えて、距骨とともに、足の立体的で複雑な動きを作り出す重要な役割を果たします。

距骨と踵骨は、足の後方に存在するので、後足部と呼ばれることがあります。

舟状骨

舟状骨(しゅうじょうこつ)は、距骨の前方にある骨で、足の内側に存在します。舟状骨は、立方骨、楔状骨と合わせて、中足部を構成しています。舟状骨は、距骨に隣接しているので、後足部と前足部をつなぐ重要な骨です。そして、足のアーチ構造の中でも最も重要な構造である内側縦アーチを構成する重要な骨です。舟状骨が柔軟に動いたり、強固に止まることで、足は衝撃吸収や、力を伝える機能を発揮する事ができます。

立方骨

立方骨(りっぽうこつ)は、踵骨の前方にあり、舟状骨や楔状骨の外側にあります。舟状骨と同様に、中足部を構成しており、後足部と前足部をつなぐ重要な役割があります。また、踵骨に伝わったふくらはぎの筋肉の力を、伝える重要な枠割があります。

楔状骨

楔状骨(けつじょうこつ)は舟状骨の前方で、立方骨の内側に存在する3つの骨の総称です。楔状骨は3つの骨が横に並んでおり、内側から、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨と呼びます。この3つの骨は、一直線に横並びになっておらず、アーチ上に並びます。この構造が、ちょうど足の土踏まずの横のアーチ(横アーチ)を構成しています。

中足骨

中足骨(ちゅうそくこつ)は、楔状骨や立方骨の前方に位置し、足の指の基部となります。そのため、5つの骨が存在し、親指側から第1(親指)中足骨、第2(人さし指)中足骨、第3(中指)中足骨、第4(薬指)中足骨、第5(小指)中足骨と呼びます。第1中足骨は最も太くて短い構造で、第2中足骨は最も長い構造です。歩行中の踏みかえし時に加わる大きな力に耐えられる構造となっています。

趾骨

趾骨(しこつ)は、足の指を構成する小さな骨です。親指以外の4つの指には、基節骨、中節骨、末節骨の3つの骨が存在し、3つの関節を構成します。親指は基節骨と末節骨の2つの骨のみで、構成されていて、2つ関節が存在します。

種子骨

種子骨(しゅしこつ)とは、植物の種子に似た形状の骨で、比較的小さいのが特徴です。足には親指の中足骨の先端の底面に2つ存在しています。この2つの骨は親指の下にある腱を守る機能があると言われています。親指に強い圧迫力が加わったりすると痛みが生じたりする場合があります。

これらの骨は、足の運動や姿勢の制御に重要な役割を果たしています。また、足の骨や関節には、損傷や疾患によって様々な問題が生じる可能性があります。

足のアーチ構造

足のアーチは、足の骨、靭帯、筋肉、腱、脂肪、および軟骨から構成される複合的な構造です。足のアーチは、体重を分散し、衝撃を吸収し、歩行時の推進力を生み出す重要な役割を果たしています。足のアーチには縦アーチと横アーチの2つのタイプがあります。

縦アーチは、足の内側と外側に存在します。足の内側にあるアーチはいわゆる土踏まずの部分をさします。このアーチは中足骨、内側楔状骨、距骨、踵骨と骨を結ぶ靭帯から成り立っています。縦アーチには、大きく2つの役割があり、1つは、体重を支え、衝撃を吸収することで、足にかかる負荷を分散する機能です。もう1つの役割は、ふくらはぎの力を足趾に伝えることです。この作用により、歩いているときの蹴り出しが可能となり、私たちは前に進むことが出来ます。この2つの機能を発揮するためには、足の関節や、靭帯、筋肉がバランス良く、適切に作用することが必要です。縦アーチは、靴の中敷きや足底装具などの補助具を使って支えることができます。

横アーチは、足の幅を作る骨、つまり、5つの中足骨で構成されます。横アーチは、足裏の底面をドーム状に持ち上げ、足裏の筋肉や腱が体重を支えるようになっています。横アーチは、足の屈曲や伸展を容易にすることで、歩行時の推進力を生み出す役割も果たしています。

足のアーチは、運動量の多いスポーツや肥満、足の形や運動不足などの影響によって、変形や弱化が起こることがあります。これにより、足に負荷がかかり、痛みや不快感を引き起こすことがあります。足のアーチの健康を保つためには、正しい靴の選び方や足の運動、ストレッチ、矯正器具の使用などが重要です。

足の関節(かんせつ)

歩行における足の関節の役割は、脚を適切に支え、重心を保持し、歩行中の負荷を分散することです。

足関節

足関節は、足首の関節をさし、少し専門的な呼び方では、距腿関節(きょたいかんせつ)とも呼ばれます。この関節は、距骨と脛骨、腓骨の3つの骨で構成されます。主な運動として、背屈(つま先を持ち上げる)運動と、底屈(つま先を下にさげる)運動が生じます。これらの運動は、歩いている際に体を前にすすめるために重要な運動となります。特に、背屈運動は、重要です。この運動が制限されてくると、歩行の際に、前に進むのが難しくなり、足の前側(前足部)の負担を増やすことに繋がります。

距骨下関節(きょこつかかんせつ)

距骨下関節は、その名の通り距骨の下にある関節で距骨と踵骨で構成されています。この関節の運動は、立体的でとても複雑です。この関節の主な動きは、回内(かいない)や回外(かいがい)とよばれ、足が内側に倒れたり、外側に倒れたりするような運動が生じます。この関節の回内や回外の動きにより、足のアーチの役割が切り替わり、衝撃吸収や力を伝える役割を果たします。この関節がうまく機能しなくなると、扁平足や、ハイアーチ(凹足)などさまざまな足の病気を生じやすくなります。

横足根関節(おうそっこんかんせつ)

この関節は、距骨と舟状骨、踵骨と立方骨で構成される2つの関節の総称です。別名で、ショパール関節と呼ばれます。この関節は、距骨下関節と同様に立体的に、複雑な運動が生じます。この関節がさまざまな方向に運動することで、足の形状を柔軟に変化させることが可能です。

足根中足関節(そっこんちゅうそくかんせつ)

この関節は、3つの楔状骨、立方骨と5つの中足骨で構成される関節です。リスフラン関節と呼ばれることもあります。この関節は、比較的強固な関節で、距骨下関節や横足根関節よりも運動範囲は小さいです。この関節は、前足部の基部となり、歩行の踏みかえしの際に、体重を支える重要な役割があります。

中足趾節関節(ちゅうそくしせつかんせつ)

この関節は、5つの中足骨と5つの基節骨の間にある関節です。この関節は背屈(つま先を持ち上げる)と底屈(足を曲げる)運動が大きく生じます。特に背屈運動は、歩行中の踏みかえしに重要な役割を果たします。この関節が背屈することで、足の裏にある足底腱膜という組織が緊張し、足のアーチを支えます。

股関節

股関節は、骨盤と大腿骨(ふとももの骨)で構成される関節で、体と足をつなぐ重要な関節です。運動としても屈曲(曲げる運動)や伸展(伸ばす運動)だけでなく、外転(足をひらく運動)や内転(足を閉じる運動)、外旋・内旋(足を捻る運動)と広い可動性がある関節です。

股関節は、体の重さを支える役割があるとともに、足を大きく動かしたり、歩く際の推進力を生み出したりする役割があります。この役割を果たすために、股関節の周りにはたくさんの大きな筋肉が存在し、歩いたり走ったりする際の股関節の機能を支えています。しかし、股関節は使用頻度が高く、年齢とともに摩耗して損傷することがあります。また、股関節には多くの疾患や病気があり、痛みや不快感を引き起こすことがあります。

膝関節

膝関節は、大腿骨と、脛骨で構成される関節で、曲げ伸ばし(屈曲・伸展)の運動が大きく生じる関節です。この運動には、膝蓋骨(お皿の骨)も重要な役割を果たしています。膝関節は、股関節や足関節と協調して作用し、歩行時の足の長さを調整し、足を前に振り出しやすくしたり、膝を曲げて衝撃を吸収したりと重要な機能があります。

一方で、非常にストレスを受けやすい関節で、加齢の影響や、不適切な歩き方などさまざまな影響で痛みが生じたり、変形が生じたりします。

骨と骨を繋ぐ足の靭帯(じんたい)

靭帯は、骨と骨をつなぎ、関節の安定性を保つ役割を持っています。靭帯は、強度のある線維組織でできており、身体を支えるために必要な安定性と可動性のバランスを維持しています。また、関節の動きを正確に制御し、適切な方向に関節を動かすことも重要な役割の一つです。靭帯は強い引っ張り力に耐えることができるため、急な動きや運動の際にも関節を保護し、怪我を防ぐことができます。
歩行における足の靭帯は、足部の安定性を保つために重要な役割を果たしています。歩行中には、足が地面と接触するときに外力が加わりますが、靭帯はこの外力を吸収し、足部を安定化させます。

例えば、足首の靭帯は、足関節の横方向の回転運動を制限しており、捻挫を防止しています。それ以外にも足には、多くの靭帯が存在し、28個の骨がバラバラにならないようにしながら、足の機能を果たすのに重要な役割を持っています。

外側側副靭帯

この靭帯は、前距腓靭帯、後距腓靭帯、踵腓靭帯で構成される靭帯で、足首の外側に存在し、足の裏が内側に向く運動が過剰にならないように制御しています。一般的な内反捻挫(足の裏が内側に向く)でもっとも損傷する靭帯です。

前距腓靱帯

前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)は、腓骨と距骨を結ぶ靭帯で、足首の外側に存在する靭帯です。この靭帯は足の裏が内に向くような運動を制御しています。いわゆる捻挫でもっとも損傷しやすい靭帯です。

後距腓靱帯:脛骨と腓骨と距骨を結ぶ靭帯で、前距腓靭帯の後方に位置します。前距腓靭帯とともに、足首の外側を支える役割を担っています。

踵腓靭帯

踵腓靭帯(しょうひじんたい)は腓骨と踵骨とを結ぶ靭帯で、足首の外側にあります。前述の前距腓靭帯と後距腓靭帯と一組になり、足首が内側に向く運動を制御しています。捻挫の際に、最も障害を受けやすい靭帯の一つです。

三角靭帯

三角靭帯(さんかくじんたい)は足首の内側に存在する靭帯で、脛骨と距骨、踵骨を繋ぐ靭帯です。この靭帯は、足の裏が外側に向かないように制御する靭帯です。これに加えて、過度に背屈したり、底屈したりしないようにしています。

底側踵舟靭帯(バネ靭帯)

この靭帯は、踵骨と舟状骨を結び、距骨を下から支えるような位置に存在します。距骨を下から支えるような形状からもわかるように距骨が過剰に下に下がらないようにすることで、内側縦アーチが過度に低下しないように支える役割があります。

外側側副靭帯

膝関節の外側にある靭帯で、膝を内側から外側に向かう外力から保護する役割があります。いわゆるO脚になるのを防ぐ役割があります。O脚の人はこの靭帯に過剰なストレスが加わっている可能性があります。

内側側副靱帯

膝関節の内側にある靭帯で、膝を外側から内側に向かう外力から保護する役割があります。いわゆるX脚になるのを防ぐ役割があります。内側側副靱帯は、スポーツでの損傷がおおく、タックルを膝の外側から受けたりすると損傷することがあります。

前十字靭帯

膝関節内部にある靭帯で、膝の前方に向けた移動や回旋を制限する役割があります。前十字靭帯(anterior cruciate ligament; ACL)は、膝関節にある四つの靭帯のうちの一つで、脛骨が前方に移動するのを防止する役割を持ちます。ACL損傷は、スポーツや交通事故などで起こることがあり、手術的治療が必要となることがあります。

足の筋肉(きんにく)

筋肉は、骨格を動かすための力を発生させるもので、神経刺激を受けて収縮し、骨格を動かします。体を支え、姿勢を維持するために筋肉は必須です。

また、筋肉の収縮により、静脈の弁が開き、血液が心臓に戻りやすくなり、血流維持にも重要な組織です。歩行では、腸腰筋( 腰から大腿部にかけて走る大きな筋肉)、大腿四頭筋(大腿骨から膝まで伸びる筋肉で、膝関節の伸展を担当し体重を支える筋肉)、ハムストリングス(大腿裏にある筋肉で、膝関節の屈曲と股関節の伸展を担当し脚を後ろに引いて体を前に進める筋肉)、腓腹筋( ふくらはぎのにある筋肉で、足首の底屈を担当し、踵を浮かせる筋肉)、と足底筋群が連動する必要があります。歩行障害になる場合、これらの筋肉に問題がおこっている場合が多くみられます。

足底筋群は次のような筋肉が関わっています。

前脛骨筋

足首の前側にあり、つま先を上に持ち上げる役割を持ちます。歩行時には足首を持ち上げてつまずかないようにする役割や、足が床についたときに足の裏がゆっくりと地面に着くようにコントロールして、衝撃吸収や推進力を生み出す役割があります。この筋肉が弱くなると、つまずきやすくなります。

後脛骨筋

ふくらはぎの筋肉の中で、最も深い位置にある筋肉で、足のアーチを支える筋肉です。この筋肉が弱くなると、足のアーチが低下して、扁平足になりやすくなります。また、扁平足の人が、たくさん歩いたり、走ったり、ジャンプしたりすることで、この筋肉の腱の部分に負担がかかり痛みを生じる場合があります。

腓腹筋・ヒラメ筋

この筋肉は、いわゆるふくらはぎの筋肉として知られています。3つの筋肉がまとまって機能を発揮するので、下腿三頭筋(かたいさんとうきん)と呼ばれることもあります。この筋肉はアキレス腱を介して踵骨に付着し、足首を下に向ける運動である底屈運動を生みます。これはつま先立ちの運動をイメージすると分かりやすいかもしれません。この筋肉は、歩く際に、推進力を生み出すとともに、足のアーチを支える役割を担っています。ハイアーチの人で踵骨に過剰に負担がかかったり、扁平足の人で、アーチがうまく支えられない場合、この筋肉に過剰な負担がかかり、アキレス腱などに痛みが生じることがあります。

長腓骨筋・短腓骨筋

この筋肉は下腿の外側にあります。ちょうど、腓骨の外側にいちするので、この名前が付いています。この筋肉は足の裏を外側に向ける作用があります。長腓骨筋は足の裏を通って、第一中足骨に付着していますので、内側縦アーチや横アーチを支える役割も担っています。

この筋肉が弱くなると、アーチの保持ができなくなり、扁平足が生じやすくなります。

長母趾屈筋

この筋肉は、後脛骨筋と同様に、ふくらはぎの深層部にあります。この筋肉は足の親指を曲げる(屈曲する)機能があります。それに加えて、内側縦アーチを支える機能があります。そのため、この筋肉が弱くなると扁平足になる場合があります。また、扁平足の人が、たくさん歩いたり、走ったり、ジャンプしたりすると、この筋肉に過剰な負担が加わり腱にいた意味が生じる場合もあります。

内在筋群

足の筋肉には、足部の骨と骨を繋ぐように存在する小さな筋肉がたくさん存在します。代表的な筋肉は、母趾外転筋といって親指を開くような運動をするときに働く筋肉があります。この他にも、短趾屈筋や、小趾外転筋、足底方形筋といった聞き慣れないような筋肉があります。これらの筋肉は、足底腱膜を介して協調して働くことで、足のアーチを保持する役割があります。足に体重が加わった際にはこれらの筋肉が足底腱膜を介してアーチの柔軟性をコントロールし、衝撃を分散します。歩行の蹴り出し時や、ジャンプする時などは、足底腱膜の緊張を高めて足のアーチを保持し、足を安定させて地面に力を伝えます。この作用が過剰になると足底腱膜に過剰な負担となり、痛みが生じることがあります。

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